昭和32年度

恩給等の増額に関する意見書について

       社会保障制度審議会は、本日「恩給等の増額に関する意見書」を検討し、別紙のごとき意見を得ました。  政府においては、十分の御考慮をいただきたく右意見書を提出いたします。    昭和三十二年十二月十九日                                         社会保障制度審議会々長                                            大  内  兵  衞  内閣総理大臣 岸   信  介 殿     恩給等の増額に関する意見書            政府は、臨時恩給等調査会の報告にもとずき、旧軍人等の恩給および援護に関する諸問題の処理を行うにあたつては、以 下述べる点に十分留意されたい。  本審議会は、本年五月に、内閣総理大臣より諮問を受けた「国民年金制定に関する基本方策」について目下鋭意審議中で あり、できるだけ早い機会に答申を行い、その制度が早期に実現されることを政府に要望するつもりである。しかるところ、 この制度には、長い将来に亘つて相当多額の国費が必要であることが十分予想されるので、政府としては、これに対する 準備、とくにそのための財源については、今日より万全の配慮をしておかれることを期待するものである。  わが国の恩給に要する経費は、逐年増額の一途をたどり、本年度予算中においても、恩給費は九百七十二億円、うち旧軍 人等の恩給費は七百八十六億円の巨額に達し、一般財政規模との関連においてすでに問題の存するところである。しかるに、 前記臨時恩給等調査会の報告が、恩給および援護に関する各問題点について極めて弾力性のある結論を出しているとして も、旧軍人等の恩給のために薪らたに必要とする経費は、なお相当巨額に達しようとしている。  旧軍人等、とくに戦没者遺族、戦傷病者等に対しては国家は相当な待遇を与えるべきであろうが、これらの人々には、恩 給法等によつてすでに一定の待遇が与えられている。しかるに、他方において、その他の戦争犠牲者、たとえば原子爆弾や 空襲によつて家を焼かれ肉身を失つた戦災者や、無一物となつて海外から引上げて来た引揚者等には、国家の援護の手がほ とんどさしのべられていない。さらに、社会には、戦争に基ずかないひどい身体障害者や、子供をかかえた未亡人や、労働 能力のない老令者や、その他なおいろいろの生活にあえぐ国民がある。政府としては、これらの人々に対してこそまず適切 な措置を講ずることが社会保障の原理に副うゆえんであると考える。  本審議会は、以上の見地から全国民を対象とする国民年金制度の早期実現を期するため鋭意検討中であるが、これまた巨 額の財源を必要とする問題である。政府は、これらの点を勘案のうえ、旧軍人等の恩給および援護の問題を処理せらんこと を要望する。

《「昭和三十二年度社会保障制度審議会報告書」(総理府社会保障制度審議会)から全文を引用:原文縦書き》 

 1999.2.21 登載
【参考資料集】
アクセスカウン ター K32