社会保険制度調査会
社 会 保 障 制 度 要 綱
                                       (22.10.8.)      社会保障制度に関する社会保険制度調査会の答申  憲法第25条の趣旨に鑑み、健康にして文化的な国民の最低生活を保障する広汎な社会保障制度の確立が絶対に 必要である。この制度の確立は、経済再建の基本的条件の一つであるが、国民経済、国家財政、社会保険、社会 扶助等各方面に亘り、周密なる検討を要するのであり、殊に、雇用、貸銀、医療等に関する諸政策の強力なる推 進と相俟つところが大であるので、これが具体的実施に当つては、これらとの関連性を充分勘案し、概ね、別紙 の要綱に基く適当と考える。      社会保障制度要綱 第一 基本理念  一 最低生活の保障    憲法第25条の、国民の健康で文化的な最低生活を保障するためには、現在の社会保険制度や生活保護   制度等では、不十分であり、このためには新しい社会保障制度の確立が必要である。なお、この制度の   確立は経済再建の基本的条件の一つである。  二 全国民を対象とする総合的制度    この制度は、現在の各種の社会保険を単につぎはぎして統一するものではなく、生活保護制度をも吸   収した全国民のための革新的な総合的社会保障制度である。なお、この制度は、最低生活を保障するも   のであるから、それ以上の生活の維持のためには、これと併せて各種の任意保険や共済施設の利用を極   力奨励する。  三 社会政策諸部門との関係の尊重    この制度は、雇用、貸金、住宅、衛生、医療、教育その他の公共の福祉等に関する政策並びに施設との   関係を密接にし、これらの諸政策の拡充強化とならんで、国民生活の保障を確立せんとするものである。 第二 社会保障の構造  一 保障事故    生活窮乏の原因はいろいろあるが、この制度の保障する事故は、主として次に掲げるものである。       傷  病       廃  疾       死  亡       出  産       育  児       老  齢       失  業  二 国民の分類    給付ときよ出のため、全国民を次の如く分類して、これを区別する。     被用者 雇用契約のもとにやとわれている者     自営者 勤労及び事業により生活を営む者     無業者 右以外の者  三 保障の種目    この制度の保障は、主として次の如きものである。      事  故       保  障     傷    病    療 養 の 給 付               傷 病 手 当 金     廃    疾    廃 疾 年 金               葬   祭   料     死    亡    寡 婦 年 金               孤 児 年 金     出    産    助 産 の 給 付               出 産 手 当 金     育    児    児 童 手 当 金     老    齢    老 齢 年 金     失    業    失 業 手 当 金    この制度は、最低生活の保障を目的とするから、それぞれの給付は、従来の所得額とは関係なく、均   一を原則とする。    なお、業務上の傷病については、その性質上、これを別個の制度として扱う。  四 費用の負担   (一) 全国民は、きよ出の義務を負う。   (二) きよ出は、大体所得に比例する。   (三) 被用者のきよ出については、その一定割合を使用者が負担する。   (四) 国は、給付に要する費用の一部及び事務費の全額を負担する。  五 行政上の責任の統一    この制度は、統一した機関において、一元的に運営する。 第三 保障の内容  一 傷 病   (一) 療養の給付      療養の給付は、治ゆするまで継続して行い、現物給付を原則とする。   (二) 傷病手当金      傷病手当金は、被用者及び自営者に対して支給する。支給期間は、療養の給付を受ける期間とす     る。但し、自営者については、待期を設け、被用者については、貸金全額を受ける期間は支給しない。      無業者である妻がある場合は、手当金を相当額増額する。  二 廃 疾    廃疾年金    廃疾者に対して、廃疾の程度に応じて廃疾年金を支給する。但し無業者である妻がある場合は、年金   を相当額増額する。  三 死 亡   (一) 葬祭料      葬祭料は、葬祭を行つた者に対して支給する。   (二) 寡婦年金      寡婦年金は、配偶者の死後、扶養児童を有する無業者である寡婦及び死別の時に50歳以上であつ     て、死別直前1年以上配偶者であつた無業者である寡婦に対して支給する。右以外の無業者であ     る寡婦に対しては配偶者の死後1年間だけ支給する。   (三) 孤児年金      孤児に対し、児童手当金より多額の孤児年金を支給する。  四 出 産   (一) 助産の給付      助産の給付は、現物給付の外、一定額の現金給付をする。   (二) 出産手当金      出産手当金は、被用者及び自営者に対し支給する。その支給期間は被用者については、産前及び     産後それぞれ6週間、自営者については、産前1週間及び産後2週間とする。但し被用者が貸金全     額を受ける期間は支給しない。  五 育 児    児童手当金   児童手当金は、義務教育終了年齢以下の子女に対して支給する。  六 老 齢    老齢年金    老齢年金は、男子満60歳、女子55歳に達した時から支給する。但し職業により、支給開始年齢は適当   に考慮する。なお、夫婦とも老齢の場合には、年金額を若干減額し、老齢に達しない無業者である妻が   ある場合は相当額増額する。  七 失 業    失業手当金    失業手当金は労働の能力と労働の意思があるにもかかわらず、就業の機会のない者に対して、就業す   るまで支給する。支給額は、傷病手当金と同額とする。但し、無業者である妻がある場合は、手当金を   相当額増額する。  八 その他の保障    特別の事情がある者に対しては、その事情に応じて適当な生活保障を行う。 第四 実施上の考慮   この制度の実施については、わが国経済の実情に照し、長期経済計画と財政負担とをにらみ合せて、大体  次のような順序で行うのが適当である。その場合には、費用のきよ出方法、現在の諸制度との関係、及び  給付内容の調節について適当な考慮を払わねばならない。なお、この制度の運用と最も密接な関係のある雇  用、賃金、医療の諸政策の強力な推進が絶対に必要であると共に第一段階では被用者の家族手当保険制度の  速やかな実施が必要である。  第一段階   療養の給付   傷病手当金(但し、被用者)   廃疾年金(但し、被用者)   葬 祭 料   寡婦年金   孤児年金   助産の給付   出産手当金(但し、被用者)   失業手当金(但し、被用者−−支給期間6カ月)   児童手当金(但し、生計調査を行う)   老齢年金(但し、生計調査を行う)  第二段階   傷病手当金(但し、自営者)   廃疾年金(但し、自営者)   出産手当金(但し、自営者)  第三段階   失業手当金(但し、自営者−−支給期間に制限をつける)  第四段階   無業者に対するその他の給付   失業手当金(支給期間、無期限)  第五段階   老齢年金  第六段階   児童手当金     附  表     \国民の分類 被用者 自営者 無業者    保障の種目\  男 女 男 女 男 女     療養の給付  × × × × × ×     傷病手当金  × × × ×     廃疾年金   × × × × × ×     葬 祭 料  × × × × × ×     寡婦年金             ×     孤児年金           × ×     助産の給付    ×   ×   ×     出産手当金    ×   ×     児童手当金          × ×     老齢年金   × × × × × ×     失業手当金  × × × × × ×   社会保障制度に要する費用概算   −−社会保障制度要綱に対するもの−−   第1表  社会保障に要する費用総額   保障の種目 費用年額 百分比   算  出  根  拠           百万円 1.療養の給付  23,278  7.05 全人口   77,592千人に対し1人年額 300円を要するものとする。 2.傷病手当金   4,370  1.32 被よう者  9,549千人に対し1人年額 174円を要するものとする                  自営者  22,697千人に対し1人年額 119円を要するものとする 3.廃疾年金    5,709  1.73 受給人員   500千人 1人年額11,618円とする 4.葬 祭 料   3,415  1.03 死亡者数  1,366千人 1件当り費用 2,500円とする 5.寡婦年金    5,400  1.63 受給人員   500千人 1人年額10,800円とする 6.孤児年金    1,440  0.44 孤児数    200千人 1人年額 7,200円とする 7.助産の給付   1,008  0.31 分娩数   2,521千人 1件当り費用 400円とする 8.出産手当金    997  0.30 被よう者 受給人員  90千人 1人当り費用 2,520円とする                  自営者  受給人員 1,215千人 1人当り費用  630円とする 9.児童手当金  190,222  57.61 孤児を除いた児童26,392千人に対し1人年額 7,200円を給付する                  ものとする 10.老齢年金   77,231  23.40 老齢者数  7,051千人 1人年額10,953円とする 11.失業手当金  17,100  5.18 常時失業者数 1,300千人 1人日額 36.5円とする   総   計  330,270 100.00 備 考  1. 本調査に用いた基礎人口は、経済安定本部統計研究会人口分科会調査(昭和21年8月)の昭和22年10月   1日の推計人口による。  2. 分娩費、療養費、葬祭費及び年金、手当金の基準とした生計費は、昭和22年8月現在により推定した。   年金、手当の基準とした生計費は物価庁調査の昭和22年8月の標準世帯生計費により、成人1ケ月900円、   児童1ケ月600円とした。これにより老齢年金、廃疾年金、寡婦年金、傷病手当金及び出産手当金は何れも   月額900円、日額30円、児童手当金及び孤児年金は月額600円を給付するものとする。  3. 無業の妻のある者に対する年金、手当金の増加額は右の3分の2と仮定し、月額600円とした。     第2表 実施第一段階に対する費用概算 保障の種目 費用年額 百分比      算  出  根  拠         百万円 療養の給付  23,278  40.68 第1表に同じ 傷病手当金   1,662  2.97 被よう者 9,549人に対し、1人年額 174円を要するものとする 廃疾年金     857  1.50 受給人員 64千人 1人年額13,390円とする 葬 祭 料   3,415  5.97 第1表に同じ 寡婦年金    5,400  9.43 第1表に同じ 孤児年金    1,440  2.52 第1表に同じ 助産の給付   1,008  1.76 第1表に同じ 出産手当金    227  0.40 受給人員 90千人 1人当り費用 2,520円とする 失業手当金   9,464  16.54 常時失業者数 715千人 1人日額 36.8円とする 児童手当金   7,200  12.58 受給人員 1,000千人 1人年額 7,200円とする 老齢年金    3,240  5.65 受給人員 300千人 1人年額10,800円とする  総 計   57,191 100.− 備 考   児童手当金及び老齢年金は、生活調査を行うのであるが、その対象とする者にはすべて.前者について  は600円 後者については月額900円を給付するものとした。  国庫は事務費として給付費の10%に相当する額及び給付費の10%、20%、30%及び50%を負担するものとした 時の国庫負担額及び国民負担額は次の通りである。    \ 国庫負担割合   10%   20%   30%   50% 内  訳\                  百万円  百万円  百万円  百万円       事 務 費  32,952  32,952  32,952  32,952 国庫負担額 給 付 費  32,952  65,904  98,856  164,760       合   計  65,904  98,856  131,808  197,712       総   額  296,569  263,617  230,665  164,761 国民負担額 1人当年額 17,414円  6,590円 5,767円  4,119円       1人当月額   618円   549円  480円   343円  国民1人当額は、労働年齢者中、年金、手当金を受ける者を除いた4000万人の1人平均負担額を示す。  国庫は事務費として給付費の10%に相当する額及給付費のうち児童手当金並老齢年金の全額とその他の給付費 の10%、20%、30%及び50%を負担するものとしたときの国庫負担額は次の通りである。   \国庫負担割合  10%  20%  30%  50% 内 訳\               百万円 百万円 百万円 百万円       事務費  5,723  5,723  5,723  5,723 国庫負担額 給付費 15,118  9,797 24,476 33,833       合 計 20,841 25,520 30,199 39,556 国 民 負 担 額 42,108 37,429 32,750 23,393    (以下略)

《「戦後の社会保障資料」(1968.3.30 社会保障研究所編 至誠堂発行)から引用》 

 1999.3.20 登載
【参考資料集】
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